「ゴム」と聞くと、タイヤやゴム製品、シーリング、ゴムホースなど、日常生活の中で様々な場面で使用される製品が思い浮かぶのではないでしょうか。ゴム製品の製造にはさまざまな加工方法が存在し、その方法は材質や形状、数量によって異なります。今回は、ゴムの加工方法について詳しく解説していきます。
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抜き加工
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裁断加工
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機械加工
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押し出し
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プレス成形
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巻き蒸し
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ライニング
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スリッター加工
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手加工
1. 抜き加工
抜き加工は、薄手のゴム板を特定の形状に打ち抜く加工方法です。鉄型や木型を使用して、円盤状やドーナツ型、さらには多少複雑な2次元の形状も作成できます。この方法は、ゴムの厚さが3mm程度までのものに適していますが、形状によっては5~8mmの厚さのゴムも抜き加工が可能です。 抜き加工を行う際には、鉄型や木型(ビクトリア型、トムソン型など)を使用します。ミリ単位の寸法であれば、外径120mmまでの鉄型が用意されています。しかし、特定のミリ単位の寸法が必要な場合や、特殊な形状の製品を作成する場合には、新たな型製作が必要です。木型は鉄型に比べてコストが低く、納期も短いですが、打ち抜きの作業能率は鉄型の方が高いため、製品のコストは鉄型の方が安くなります。
抜き加工を行う際の寸法公差は、通常±0.3mm程度です。木型のコストは、簡単なドーナツ形状であれば2,000円から3,000円程度ですが、鉄型は8,000円から10,000円程度となります。また、複雑な形状の鉄型はコストが高くなるため、20~30以上の数量がある場合は木型を使用することが多いです。
弊社では、数十枚から数百枚程度のロットの製品を製作することが多いです。小さなワッシャーの場合、数万程度のロットとなることもあります。木型で数千、数万のロットを製作する場合、連続自動抜きなどの設備が必要となります。
2. 裁断加工
裁断加工は、シャーリングや裁断機とタガネで裁断して形状を作る方法です。
3. 機械加工(切削)
機械加工は、工作機械を使用してゴムや特定の材料を切り出す加工方法です。特に、厚さが一定以上のゴムや、3次元の加工が必要な場合にこの方法が選ばれます。この加工方法は、製品1個あたりのコストは高くなるものの、プレス成形と比較して型代が不要なため、少量生産の際にはトータルコストが有利になることが多いです。
5mmから10mm程度のゴム板に丸い穴を開ける場合、抜き加工と機械加工の2つの方法が考えられます。抜き加工はコストが低い反面、穴の断面がテーパーになる可能性があることがデメリットです。一方、機械加工ではテーパーがつかず、きれいな仕上がりとなりますが、コストが高くなる可能性があることがデメリットです。
近年では、カッティングプロッターやウォータージェットを使用した加工も増えてきました。これらの技術は、細かい部分や複雑な形状の加工に適しており、特にウォータージェット加工は他の方法では難しい細かい加工が可能です。
機械加工にも限界があり、特に小さい丸を正確に切り出すのは難しい場合があります。しかし、適切な機械や技術を選択することで、これらの課題を克服することが可能です。
4. 押し出し
押し出し加工は、口金(穴の空いた金属片)を通して、特定の形状を持つゴム紐や製品を作成する方法です。この加工方法は、ところてんを押し出すイメージに近く、丸紐や角紐などのさまざまな断面形状の長いゴム紐を作成する際に使用されます。
押し出し加工の寸法精度は、プレス成形に比べてやや劣る場合があります。たとえば、外径6mmの丸紐の場合、寸法の公差は±0.5mm程度です。
基本的な寸法の丸紐用の口金はある程度用意されていますが、多くの場合、新規に製作する必要があります。ゴムの材質によって膨張率が異なるため、異なる材質用の口金は使用できません。そのため、材質変更の際には新たな口金が必要となり、それに伴うコストが高くなることがデメリットです。
複雑な形状の押し出し製品をエンドレスにする場合、加硫接着という方法を採用することがあります。この方法は、接着用の型を使用して接着部分を固定し、釜に入れて加熱することで加硫接着を行います。
5. プレス成形
プレス加工は、ゴムを特定の金型に挟み、プレス機を使用して成形する加工方法です。この方法は、製品の寸法精度を高く保ちたい場合や、安定した寸法の製品を大量に生産したい場合に特に適しています。
プレス加工の大きな特徴として、金型代が比較的高価であることが挙げられます。特に、手のひらサイズの比較的単純な形状の製品であっても、金型代は数万円から数十万円かかることが一般的です。しかし、一度金型を製作してしまえば、製品単価は大幅に安くなるため、大量生産を前提とした場合には非常にコストパフォーマンスが良い方法となります。
プレス加工は、寸法精度を高く保つことが可能な加工方法です。そのため、製品の品質や寸法の一貫性を重視する場合には、この加工方法が選ばれることが多いです。
6. 巻き蒸し
巻き蒸しは、マントルと呼ばれる金属の芯棒に生ゴムを巻きつけ、その外側に布を巻き付けて蒸気で加硫する加工方法です。巻き蒸しは、特に機械加工での製造が困難な500L程度の肉厚の薄いパイプを作成する際に採用されます。
巻き蒸し加工を行うと、製品の外側には布目が形成されます。この布目が製品の品質や見た目に影響を与える場合、追加の仕上げ加工が必要となることがあります。
巻き蒸し加工の納期は、一般的に2週間程度を要します。また、既存のマントルを使用できる場合はコスト削減に繋がりますが、新たにマントルを製作する必要がある場合、追加のコストが発生することがあります。
7. ライニング
ライニング加工は、金属のロールや部品に生ゴムを貼り付け、その後加硫して外側を仕上げる一連の加工方法です。この加工方法は、特に金属部品の表面を保護したり、特定の性質を持たせたりするために行われます。
ライニング加工は、以下の3段階の工程を経るため、納期が長めになることが特徴です。
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芯となるロールの表面をサンドブラストで処理する
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サンドブラストされたロールに生ゴムを巻きつける
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巻きつけたゴムを加硫し、外側を仕上げ加工する
8. スリッター加工
スリッター加工は、ゴムシートを細かく切り分ける方法です。ゴム板を一定の幅で長くカットするときに使用します。
9. 手加工
手加工は、職人が直接手作業でゴム材料を成形・加工する方法です。この方法は、以下のような特定の条件下でのゴム製品の製作に適しています。
手加工は、ものさしで計測し、ボールペンや罫書きペンで罫書きを行い、カッターやタガネを使用して切断するため、寸法精度は一定の範囲内に収まります。
まとめ:ゴム加工のご依頼は東京機革まで
ゴム製品の製造には、材質や形状、数量に応じて最適な加工方法を選択することが重要です。適切な方法を選ぶことで、品質の高いゴム製品を効率よく製造できるからです。
昭和8年創業、加工のプロである株式会社東京機革では、さまざまゴム材料を多様な加工方法でお客様のご要望にあわせた形状を実現いたします。まずはお電話(03-2623-0111)、FAX(03-3621-1923)、またはお問い合わせフォームからご相談ください。お客様のニーズにあわせて最適な加工方法をご提案いたします。短納期・小ロットであっても可能な限り対応してまいります。
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