ニトリルゴム(NBR)は、日常生活から工業分野まで幅広く利用されている素材です。耐油性や耐摩耗性に優れ、特に自動車部品や工業用パッキンでも欠かせない存在となっています。
今回は、ニトリルゴムの特性や具体的な用途、加工方法について詳しく解説します。
ニトリルゴム(NBR)とは?特性は?
NBRとは、Nitrile butadiene rubber(ニトリル・ブタジエン・ラバー) の略称で、ブタジエンとアクリロニトリルを混ぜて作られる合成ゴムです。NBRやニトリルゴムは一般名称で、商品名としてPerbunan、 Buna-N(ブナN)、Hycar(ハイカー)などがあります。ブナNとかハイカーなどは通称として用いられています。
ニトリルゴムの特性は、アクリロニトリルの含有量によって大きく変わります。たとえば、アクリロニトリルが多いほど次のような特性が向上します。
- ・耐油性:ニトリルゴムは油に強く、漏れを防ぐシール材として優れていますが、アクリロニトリルの含有量が多いとさらに耐油性が高くなります。
- ・耐摩耗性:摩耗にも強い本来の特性がさらに強化されます。機械部品など摩擦が生じる箇所での使用に適しています。
- ・引張強さ:アクリロニトリルの含有量が増えると、引っ張っても切れにくい強さを持つようになるので、耐久性も高まります。
- ・硬さ:ゴムの硬さもアクリロニトリルの量で調整可能で、含有量が多くなると硬さも増します。
一方で、アクリロニトリルが多くなると、以下のようなデメリットも生じます。
- ・低温柔軟性の低下:アクリロニトリルが多いと、低温環境での柔軟性が失われやすくなります。寒冷地での使用には注意が必要です。
- ・反発弾性:アクリロニトリルが多くなると、反発弾性も下がってしまいます。ですので、弾性が要求される場面では注意が必要です。
ニトリルゴムを選ぶ際には、使用する環境や目的に応じて特性を考慮する必要があります。たとえば、自動車のエンジン周りの部品には、耐油性が高く、引張強さや耐摩耗性が重要です。一方で、寒冷地で使用する部品の場合、低温柔軟性が必要となるため、アクリロニトリルの含有量を調整するか、他のゴム材料を検討することが求められます。
また、工業用品では、耐油性だけでなく、耐摩耗性や引張強さが求められる場合があります。この場合も、使用条件に合わせたニトリルゴムを選定することが重要です。
ニトリルゴムの用途
ニトリルゴムは、その優れた耐油性と耐摩耗性により、さまざまな用途で活躍しています。特に、自動車部品や工業用パッキンとして広く使用されています。具体的な用途は、以下のとおりです。
自動車部品
- ・オイルシール:オイルシールは、エンジンやギアボックス内のオイルを封じ込めるために使われます。ニトリルゴムの耐油性が、油漏れを防ぎ、長寿命のシールを実現可能とします。
- ・Oリング:Oリングは、液体やガスの漏れを防ぐためのシールリングです。ニトリルゴムの高い耐油性と耐摩耗性により、エンジンやブレーキシステムでの使用に適しています。
- ・オイルホース:エンジンオイルや燃料を輸送するホースです。ニトリルゴムは、油に対する優れた耐性が求められるこの用途に最適です。
工業用品
- ・パッキン:パッキンは、機械や装置の接合部での漏れを防ぐシール材です。ニトリルゴムの耐油性と耐摩耗性が、油圧システムや圧力容器での使用を可能にします。
- ・印刷ロール:印刷機のロール部分に使用され、ニトリルゴムの耐摩耗性が、長期間の使用に耐える製品を提供します。
- ・接着剤:ニトリルゴムは、耐油性や耐薬品性が求められる接着剤の成分としても使用されます。
- ・ガスケット:ガスケットは、機械部品の間に挟まれるシール材です。ニトリルゴムは、耐油性が重要なガスケットに適しています。
ニトリルゴムの加工方法
ニトリルゴムの加工方法には、以下のようなものがあります。
- ・抜き加工:薄手のゴム板を特定の形状に打ち抜く方法です。主に鉄型や木型を使用し、円盤状やドーナツ型、複雑な2次元形状も作成可能です。抜き加工は3mm程度までの薄いゴムに適していますが、形状によっては5~8mmの厚さのゴムも加工できます。寸法公差は±0.3mm程度です。
- ・裁断加工:シャーリングや裁断機とタガネで形状を作る方法です。この方法は、簡単な形状のゴム製品を効率よく製作するのに適しています。
- ・機械加工(切削):工作機械を使用してゴムを切り出す方法です。厚さが一定以上のゴムや、3次元の形状が必要な場合に適しています。この方法は少量生産に向いていますが、製品1個あたりのコストは高くなることが一般的です。
- ・押し出し:特定の形状を持つゴム紐や製品を作成する方法です。この方法は、丸紐や角紐などの長いゴム製品を作成するのに適しています。寸法精度はプレス成形よりやや劣りますが、コストを抑えられます。
- ・プレス成形:ゴムを特定の金型に挟み、プレス機で成形する方法です。寸法精度が高く、大量生産に向いています。
- ・巻き蒸し:金属の芯棒に生ゴムを巻きつけ、蒸気で加硫する方法です。この方法は、薄い肉厚のパイプを作成する際に使用されます。
- ・ライニング:金属部品に生ゴムを貼り付け、加硫して外側を仕上げる方法です。金属部品の保護や特定の性質を持たせるために行われます。
- ・スリッター加工:ゴムシートを細かく切り分ける方法です。一定の幅で長くカットする際に使用されます。
- ・手加工:職人が直接手作業でゴム材料を成形・加工する方法です。製作数量が少ない場合や、大きな寸法の製品を作る場合、木型で抜くには厚すぎるゴム材料の場合に適しています。
まとめ
昭和8年創業の加工のプロである株式会社東京機革ではこのNBR(ニトリルゴム、ハイカー)を自社工場にて加工しております。形状やロットに合わせて、木型打ち抜き、カッティングプロッタによる加工、スリッター加工など最適の加工法を提案し、小ロットから最短納期で提供致します。
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